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株式会社 栃本天海堂

2018年 生薬市場の展望 ―社会主義近代化強国―

はじめに

 中国経済の大きな転換期は、鄧小平が推し進めた改革開放路線で、この方針は中国の経済政策における基本方針と位置づけられ、「社会主義市場経済」として 1993 年に中華人民共和国憲法を改憲した際に盛り込まれた。この後の 20 年間の中国の経済発展は目覚ましく、日本を追い抜き世界第 2 位の GDP にまで成長した。この「社会主義市場経済」により、中国国内価格と海外輸出価格の二重価格制度が崩壊し、生薬の価格も安価な国内価格で海外市場に流通することになり、中国産生薬の低価格状態が続いた。  次に特記すべきは習近平総書記が提唱した経済圏構想である「一帯一路」であろう。この方針で習近平総書記は 2017 年 10 月の中国共産党第十九回全国代表大会で「わが国を富強民主文明と調和ある美しい社会主義近代化強国を建設し、世界のトップレベルの国家になる」と表明した。「社会主義近代化強国」の宣言であり、国民の所得向上、生活水準の向上と環境保全の重要性が挙げられている。PM2.5 や自然環境などの問題で石炭使用の制限、森林伐採の開発許可の制限などで現実的にコストより環境保全が優先される時代へと移行している。

 次に特記すべきは習近平総書記が提唱した経済圏構想である「一帯一路」であろう。この方針で習近平総書記は 2017 年 10 月の中国共産党第十九回全国代表大会で「わが国を富強民主文明と調和ある美しい社会主義近代化強国を建設し、世界のトップレベルの国家になる」と表明した。「社会主義近代化強国」の宣言であり、国民の所得向上、生活水準の向上と環境保全の重要性が挙げられている。PM2.5 や自然環境などの問題で石炭使用の制限、森林伐採の開発許可の制限などで現実的にコストより環境保全が優先される時代へと移行している。

生薬市場の状況

 コストより環境保全が優先される状況により、生薬は野生品種の採集が禁止され、森林 伐採による新規開墾が禁止され、人件費の高騰、化石燃料の制限で生薬の生産コストは 上昇する。また、国民の所得・生活水準の向上は生薬の需要が増大し、供給不足、価格高騰 などの問題点を残す事になる。

*牛黄価格の高騰
日本で使用(輸入)される牛黄の 70%以上がブラジル産である。その為、日本の市場 価格はブラジル産が Price leader となり相場が構成されるが、そのブラジル産牛黄が 2017 年 の後半から急激に価格が上昇してきた。下記の図表データの 10 月までは財務省の輸入統計 から抜粋しているが、11・12 月は一部の輸入業者の実績に基づいて作成したものである。

 2016 年の後半から牛黄の生産量が減少しているとの情報により価格の上昇は続いていたが、この様な高値になると購買力が低下し、輸入量が減少し価格は安定するのが、通常である。
 しかし、牛黄の価格相場は 8・9・10 月と上がり続けている。これは日本以上の牛黄消費国である中国の買付が止まらない事に起因していると考えられる。日本市場も、在庫不足で高価格でも数量確保をせざるを得なくなっており、その価格が 11 月・12 月の予想価格水準である。
 この価格帯は過去に例を見ない価格水準ではあるが、中国サイドの購買力が低下するか、あるいは生産量が拡大しない限り値下がる気配は見えない。また、長期的に必要数量を確保する事が難しいことも考えられる。

*2017 年中国産人参の状況と今後の展望

◎2017 年人参市場の状況

次のグラフは 2002 年から 2016 年の日本向けの人参輸出単価の推移である。(中国海関総署統計抜粋)
 中国産人参は 2010 年産から値上り始め 2013 年産はその価格が$100.-/kg 以上に急騰した。その結果、人参の栽培面積は大幅に拡大され、その収穫期にあたるのが、2017 年からの生産である。栽培面積から生産量の過剰が見込まれ価格は 2011 年の水準にまで下がるのではと一部の市場関係者は見ていた。

 新産期の 8 月下旬から 9 月初旬はこの予測に基づき低水準で水参(新鮮人参)が取引された。しかし、市場に上市されても商品が滞留せず売買が成立する状況が続いたことで、価格は減少せず、上昇気配となった。この結果には二通りの見解があり、一つは生産量が天候、冷害などの影響で予想より少なかったとする見方と他方では国内需要量の拡大、異業種の投機筋の購買による相場との考えがある。これらの情報が錯綜するなか、日本向けの生干人参輸出価格は 2016 年度より 15%~ 20%の値上り相場で始まった。

◎2018 年以降の人参市場の展望

 2013 年、2014 年と栽培面積は拡大されたが、2015 年に黒龍江省の森林地伐採による人参栽培が環境保護団体から問題視され、環境保全の理由から黒龍江省は森林地伐採使用を制限した事で、2015 年以降の栽培面積は大幅に減少した。また 2016 年は黒竜江省では新規の森林地使用許可は下りておらず、他の産地の吉林省でも新規に開拓する森林地伐採面積は少なく拡大される見込みは無い。
 中国の人参栽培は、未開の肥沃な森林を開墾して未汚染地を利用する栽培方法で、日本・韓国の様な既存の畑地を利用する栽培は生産コストが高いため、今でも一部でしか行われていない。人参栽培は森林伐採の栽培から畑栽培に移行されていくが、畑栽培の生産量で森林栽培の数量を補充するには相当の時間がかかると思われる。
 2018 年の生産量は過去最大になるが、2019 年以降の減産は確実視されており、2018 年以降の価格水準は、予測は難しいが徐々に上昇し、2020 年以降は 2014 年の水準に戻ると考えるのが一般的であろう。

おわりに

 中国経済・政策の変化が激しく、生薬市場の今後の予測はつかめません。日本の生薬業界は自給率の向上を急がなければ、日本漢方の将来に大きな問題を残す事になるでしょう。
今回の「2018 年 生薬市場の展望」をもって、終稿とさせていただきます。